ヴィンテージファズクローン製作ではもはや知らない人はいない?田渕ひさ子さんや高松浩史さん(THE NOVEMBERS)他、プロ愛用者も多い「Organic Sounds」の新作オーバードライブペダル「Zeus Overdrive」をレビューします!
「Organic Sounds」のオーバードライブといえば以前、「Hydra」「Ares」をレビューしました。
今回は「Zeus」製作にあたり、どんな想いで開発されたのか?ビルダーのY.Watanabe氏に色々お伺いしましたのでレビューと共にお送りしていきます!
ペダルレビュー
「Organic Sounds」のオーバードライブは今回で三作目、その名も「Zeus(ゼウス)」と並々ならぬ意欲を感じるモデル名です。
表記はありませんがツマミは3つ、左からゲイン、トーン、ボリューム。
筐体は前作の「Hydra」「Ares」と同様の形状、カラーは黒では濃紺。筐体のずっしりした重さ、質感も相まって重厚感があります。
内部(基盤)を見てみますとオペアンプベースのオーバードライブ、クリッピング用のLEDを見つけることができます。
電池でも駆動、外部電源はセンターマイナス9Vでも駆動します。
電池も中で動かないよう固定できる仕様は「Hydra」「Ares」と同様ですね。
サウンドレビュー
あくまで主観ですが以前に発売されていた「Ares」「Hydra」よりも汎用性の高いオーバードライブに感じました。
以下、機材でチェックしましたが、相性が悪いなど問題もなし。
- ギター:Fender C/S Stratocaster 1960
- 真空管アンプ:Fender 63Vibroverb EVA MOD. & 64Vibroverb
- ソリッドステートアンプ:Roland JC-40
マイアンプを持ち出せない方でも環境に左右されにくい、使い所を選ばないオーバードライブと言えるでしょう。
どんなオーバードライブサウンドなのか?
この「Zeus」、僕がパッと弾いた時、そのサウンドで近しいと感じたのは「FULLTONE OCD」。
ただし比較に用いたOCDは現行品(V2.0)ではなく、初期OCD(V1.1)と比較しました。
歪みの質感等似ていると感じましたが「Zeus」の個性、僕が良いと感じたところは以下、3つ。
- ハイ、ハイミッドの出方
- ザラっとした質感
- どこかファジーでファズフェイスを思わせる挙動
ハイ、ハイミッドの出方は「Organic Sounds」らしく、ガッと弾いた時に突き抜けるサウンドと言えるのではないでしょうか。
これはツマミの位置を全て12時にした時に感じられ、エフェクトOFF時と聴き比べてもわかります。
ザラっとした質感は「OCD」と比較した時に感じたのですが、ピッキングした時にまとわりつく、食いつくようなバイト感があるため、エフェクター臭さが弱いと感じました。
またこの「Zeus」はどこかファジー、誤解を恐れずに言いますとツマミを触った時の挙動もファズフェイスを思い起こしました。
ぼくがそう感じたのは「Zeus」のボリューム(右端のツマミ)を上げていきますと、ボリュームのツマミを2時ぐらいまで上げていった時に音量だけでなく、高域成分も付加されていきます。
単純にボリュームといった仕様ではなく、ゲインやトーンと相関関係にあるため、3つのツマミで音作りできます。
セッティングはツマミの位置12時スタートで問題ありませんが、ボリュームは少し上げ目、できればボリュームは1時以降に上げることで「Zeus」のポテンシャルは発揮できるとも感じました。
僕はまずボリュームをセット、トーンとドライブを調整していくと、自分好みのセッティングを見つけやすかったです。
「Zeus」についてビルダーのY.Watanabe氏にいろいろ聞いてみた!
Organic Sounds Y.Watanebe氏に「Zeus」開発にまつわるアレコレを伺いました。
今回の「Zeus」ですがどのような想いで作られたのでしょうか?
「Zeus」はオーバードライブとしておさえておいてほしいポイントをおさえた最高のオーバードライブにしたくて。TSやケンタは素晴らしいですが、あくまでオリジナルなオーバードライブを。「Organic Sounds」が作る音を大切にしたいなと。
「Zeus(ゼウス)」と言う名前からしてもそうですよね。
音で言えば、Toneを12前後でも出てくるハイ、ハイミッド、グッとギラっとしたサウンドに特徴を感じましたが、これも「Organic Sounds」が作る音と解釈してもよろしいのでしょうか?
そうですね。やっぱりモッコリした音のオーバードライブは好きになれなくて。適度な粗さはありつつも密度はある。
前作のHydraは全体域を余すことなく出す、Aresはハイよりでイナたいサウンドを。今回のZeusは「Organic Sounds」の考えるちょうど良いレンジ感を追求して開発しました。より多くの方にとってベストな選択となるオーバードライブになればと考えています。
サウンドは人それぞれ感じ方や好みはありますが、僕にとってもオーバードライブペダルとして必要な要素を「Zeus」から感じました。
今回のレビューでは「OCD」等、お気に入りのオーバードライブペダルと比較しましたが、同様に使えるクオリティの高さを感じました。
余談ですがY.Watanabe氏はあの「音楽と人(2021年1月号)」に掲載、ペダル作りに対する情熱等々、語られています。ご興味のある方はご覧になってみてください。
バッファーサウンドについて
「Zeus」はバッファード仕様であるため、エフェクトOFF時にはバッファーとして機能します。
バッファード仕様のペダルでバイパス音に定評があるといえば「KLON Centaur」。
手元に「Centaur」がないため、僕が気に入っている「Centaur」系ペダル「Mythos Pedals Mjolnir Wildwood Edition」を用意、バッファーサウンドを比較してみました。
「Mjolnir Wildwood Edition」よりも「Zeus」の落ち着いた耳馴染みの良いバッファーサウンドに感じました。バッファー臭さがないのでバッファーが苦手な方にも良いかも。
エフェクターボードにバッファーを入れたい、でも煌びやか、高域が立ってしまうからバッファー入れたくない…といった方にはハマるかも。
また「Mjolnir Wildwood Edition」とドライブサウンドも比較してみました。
面白いことに「OCD」だけでなく、この「Mjolnir Wildwood Edition」も似た雰囲気のドライブサウンドが出せました。
「Organic Sounds」の提言する「オーバードライブとしておさえておいてほしいポイント」が詰まったペダルというのが理解できた気がしました。
「Zeus」と「Ares」を比較してみた
僕が弾いた印象では「Ares」「Hydra」とはまた毛色の違うオーバードライブに感じました。
今回、ちょうど手元に「Ares」がありましたので比較してみました。
ざっくり感じた違いを言いますと「Zeus」に比べると「Ares」はモダンなサウンドに感じました。手元(ギターボリューム)を絞った時は「Zeus」のほうがカリッとした感じがあり、僕は好みでした。
「Organic Sounds」からは全3種類のオーバードライブが発売されていますが、サウンドで被ることはないため、ケースバイケースで使い分けできる、所有欲を刺激されますね…
まとめ
「Organic Sounds」から発売されているオーバードライブはどれも個性があるため、何を選ぶかはプレイヤー次第ですが、僕が選ぶならこの「Zeus」です。
ローゲインからハイゲインまでとゲインレンジも広く、手元(ギターボリューム)を絞った時のサウンドも腰砕けしませんし、カリッとした抜けの良いヴィンテージライクなサウンドを感じるからです。
もし僕が「Zeus」を使うとすれば、ゲインを上げて使うことも考えますが、ボリュームを2時ぐらい、ゲインとトーンを下げめでややクランチするセッティング、プリアンプ的にも使ってみたい。
「Organic Sounds」のペダルは楽器店での取り扱いも増えていますので、見かける機会があれば是非、手にしてみてほしいモデルですね。
「Organic Sounds」といえば、僕もファズを愛用していますが他のモデルもぜひチェックしてみてください。
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