TS系オーバードライブペダルは数多く存在します。レビューする「E.N.T EFFECTS Aggressive Over Drive」はTSペダルの欠点を改善、オペアンプやパーツ選定などを経て完成させたモデルとのこと。
SNSで気になっていたオーバードライブペダル、ようやく試すことができました。
「過剰なコンプレッション感を取り除き、レスポンスを向上させる」、「ボリューム・ゲインを大幅に強化し、クリーン~ハイゲインまで対応する」、「TSの特徴的なミッドレンジを確保しながらも高域・低域を増加させる」という3点を特に意識して製作しました。
この開発コンセプトはなぜ生まれたのか?E.N.T EFFECTSさんに聞いてみました!
この「Aggressive Over Drive」の開発コンセプト、拘りは何でしょう?
開発コンセプトは「高音質かつオーセンティックであること」です。気を衒うことなく、誰にでもわかりやすい操作感で質の良いエフェクターを作りたいと考えて制作しました。LandgraffのDODがとても好きでして、同じ土俵で勝負したいと思い、今回はTS系という括りで制作しました。特に昨今の高速オペアンプの技術の進歩が素晴らしく、オペアンプに着目しています。
ではどんなサウンドなのか?ペダル製作における狙いや想いもE.N.T EFFECTSさんにお伺いしましたのでご回答を交えながらレビューしていきます!
ペダルレビュー
「Aggressive Over Drive(アグレッシブオーバードライブ)」のツマミはシンプルに3つ。
- Volume
- Tone
- Drive
「Volume」はバイパス時と比較し最大約10倍以上の増幅率を持たせ、「Tone」はTS系のトーン回路を踏襲。
「Drive」は10時で一般的なTS系ODと同等のゲイン、10時以降はディストーションの域に達するゲインを稼げるとのこと。
セッティングをする際、全てのツマミを12時でスタートさせるか、ゲインを10時ぐらいにセットすると良いかと。あとはお好みに合わせ「Tone」を調整すればOK。
「Level」はジャズコなどのクリーンアンプの場合、12時だと音量が大きくなりますが、音の押し出し感、芯が出てくるため、できれば12時以上で鳴らしてみてほしいですね。
TS系ペダルですがバッファードではなく、トゥルーバイパス仕様。
メーカー説明を見るとオペアンプは「Leqtique Maestoso」にも使われている「AD712」や、Drive(ゲイン)がゼロの時にプリアンプとして機能させることを目的に「LT1364」をバッファ回路に採用しているそうです。
電池駆動はできず、外部電源(センターマイナス9V)で駆動します。
サウンドレビュー
メーカーコンセプトの通り、一般的なTS系オーバードライブと比べると確かにハイ、特にローが出る印象。
これは「Drive」を下げた状態でも感じられますが、「Drive」を上げていくことで顕著となり、コシの座ったミッドロー、ローが付加されていきます。また「Drive」を上げても音が潰れる、破綻しにくいのも特徴でしょうか。
「Aggressive Over Drive」の特徴、どんなプレイヤーにつかってほしいのか?E.N.T EFFECTSさんに聞いてみました。
レンジが広くディストーション並みに歪むオーバードライブが少ないと思ったので、自分の好きな音質で再現したかった思いがありました。
また音に拘りを持ったミドルクラス以上の方でも満足して使って頂ける音質を目指しています。エフェクター好きの方に使っていただきたいです。
僕が弾いたイメージとしては「Tone」を12時にセット、シングルコイルギターのリアピックアップで鳴らしても、太くメロウなディストーション的なサウンドが作れました。「Tone」を上げていけば、ワイルドなサウンドも作れる印象がありました。
今回のレビューにあたり複数の環境でチェックしましたが、ジャズコ(JC-40)で弾いた時の印象として、スタジオの置きアンプ(JC-120やJCM-2000等)でも大いに活躍してくれる印象を持ちました。
ペダル開発時、JC-120やMarshall JCM-2000でもチェック、チューニングしたとのことでしたが、頷けますね!
いろんな環境でサウンドをチェックしてみました
僕の環境ではありますが、アンプ(Roland JC-40、Feder 63Vibroverb EVA MOD.)他、アンプシミュレーター(ZOOM G1on)でチェックしてみました。
ソリッドステートのアンプ特有の硬さを和らげ、スムーズな歪みを作れましたし、「Drive」を上げた状態で「Tone」を触れば、バイト感や分離感を調整することもできました。
僕が使うなら「Drive」は2時~3時ぐらいで使いたいかも。非常に弾きやすい音が鳴らせる印象でした。
アンプセッティング、音量にもよりますが「Drive」を3時近くまで上げていく(動画:5:15~)と、シングルコイルギターでもフィードバックが発生しますが、嫌なノイズは発生しにくいと感じました。
次は「G1on」からオーディオインターフェースに繋ぎ、録音した動画です。
開発時、アンプシミュレーターとの組み合わせもチェックしているとの話を聞きましたが、確かに問題なく使える印象でした。
個人的に「Aggressive Over Drive」で気になった点が2つ。
まずはTS系ペダルの宿命か…手元(ギターボリューム)を絞った時にこもりがちになることでしょうか。
先ほどのJC-40の動画でもチェックしていましたが「Tone」を上げることで、ある程度解消はできるのですが…個人的には少し気になりました。
ただこの仕様もE.N.T EFFECTSさんは意図して製作されているとのこと。
ギター側ボリュームでの操作感は私自身とても悩むところではありました。最近ではスムーステーパーと呼ばれるハイパスフィルタがギター側に取り付けられることも多く、エフェクター側で高域を出すとそのようなギターに対応できないことがありました。またTS系に準拠させたいという思いがありましたので、ボリューム操作の挙動は同じ方が良いのかなと考え、今回はTSと全く同じ操作感で制作しました。
動画で使用したストラトキャスターはスムーステーパーを取り付けていませんが、確かにスムーステーパーが取り付けられたギターの場合であれば、手元を絞った時の感じはちょうど良いかも。
あと「Drive」をゼロにした時にクリーンブースター/プリアンプとして使えるとのことでしたが、原音に対して「Aggressive Over Drive」のキャラクター、色付け感が出てしまうと感じました。
この色付け感についてもE.N.T EFFECTSさんに聞いてみました。
「Drive」をゼロにした時、僕はイメージするクリーンブースターより色付け感がありましたが、この色付け感を残した理由は何故でしょうか?
これに関しては私のエゴとしか言いようがありません(笑)
制作当初はもっと原音に忠実で、レスポンスが最高速といえるような回路だったのですが、実際に音出ししてみるとこれが全く面白くありませんでした…エレキギターは高音質であれば良い音というわけではないと実感した瞬間でした。ですからクリーン状態でもAggressive Over Driveのキャラクターが出る様にオペアンプLT1364の反応速度をわざと遅らせた回路にしています。この方が荒々しさが出て面白いと感じ、そのまま採用しています。
なるほどですね!ではE.N.T EFFECTSの考えるプリアンプ、クリーンブースターの定義とは何でしょうか?
私もプリアンプ、クリーンブースターは原音に忠実であると考えています。しかしながら原音に忠実なエフェクターはもうすでに多く発表されていますし、上記の様に自分が改めて作っても面白みがないかな、と思いました。
オーバードライブをプリアンプ、ブースターとして使用するのであれば、多様性があった方がユーザーにとっても選択肢の幅が広がるのではないかと思い、当製品では低域をスッキリさせて、高域のレンジを広げた回路にしています。
僕が気になっていた点も他のペダルとの差別化、オリジナリティーあるペダルを作りたい想いから意図的な仕様だったことがわかりスッキリしました^^
ゲインブースターとして使用してみてほしい
「Aggressive Over Drive」を使うならミッドロー、ローが豊かに太く歪むキャラクターを活かし”がっつり歪ませて鳴らす”他、ペダルのゲインブースターとして使ってみてほしいかなと。
僕も手持ちの「BOSS BD-2」「Proco RAT」のゲインブースターとしてチェックしてみましたが、ペダルの質感を残しながら太くゲインアップできました。
BD-2のジャキッとしたサウンドに「Aggressive Over Drive」を組み合わせることで、リード向けサウンドを作ることができます。
僕は以前、同じ目的で「JHS Pedal Moon Shine Overdrive」を使っていたことがありますが「Aggressive Over Drive」のほうがイメージに近いサウンドで鳴らすことができました。
RATのローカットされるキャラクター(RATの良さでもありますが)に対し、補填するように「Aggressive Over Drive」を組み合わせるのもアリかなと。
他に思いつくペダルであれば「Lovepedal COT50」あたりも組み合わせてみると面白そう。
あと「Aggressive Over Drive」をトーン調整のように使う、例えばマフ系ペダルと組み合わせてみるのも一つかなと。
レンジを損なわずに鳴らす帯域をシフトさせ、抜け感をコントロールするといった使い方もできると感じました(好みは人それぞれですが)。
まとめ
TS系ベースのペダルと聞くと目新しさを感じない人もいるかもしれませんが、ジャズコをはじめ、スタジオやライブハウスの置きアンプで太く、スムーズ~ワイルドな歪みを作りたい方には新たな選択肢が増えたといえるでしょう。
単体でがっつり歪ませるのも良し、ゲインブースターとしてアンプやペダルをプッシュしてあげても良し。
サウンドセッティングもしやすいため、初心者の方にも試してほしいペダルですね。
以下、店頭でも試すことができます。お気に入りのペダルを手に…是非!
- 宮地楽器 神田店
- 宮地楽器 ららぽーと立川立飛店
- ヨシダ楽器 イオン福岡伊都店
- 山野楽器 イオンモール浦和美園店
コメント